2018年10月17日水曜日

あの人の言の葉 塚本太郎

 海軍大尉 塚本太郎

 昭和20年1月21日
 中部太平洋方面にて戦死
 茨城県龍ケ崎市出身 22歳


 父よ、母よ、弟よ、妹よ、そして永い間はぐくんでくれた町よ、学校よ、さようなら。
 本当にありがとう。
 こんな我がまま者を、よくもまあ本当にありがとう。

 僕はもっと、もっと、いつまでも皆と一緒に楽しく暮らしたいんだ。
 愉快に勉強し皆にうんとご恩返しをしなければならないんだ。

 春は春風が都の空におどり、みんなと川辺に遊んだっけ、夏は氏神様のお祭りだ。
 神楽ばやしがあふれている。
 昔はなつかしいよ。
 秋になれば、お月見だといってあの崖下に「すすき」を取りにいったね。
 あそこで、転んだのはだれだったかしら。
 雪が降り出すとみんな大喜びで外へ出て雪合戦だ。
 昔はなつかしいよなあ。
 こうやって皆と愉快にいつまでも暮らしたい。
 喧嘩したり争ったりしても心の中ではいつでも手を握り合って……

 然しぼくはこんなにも幸福な家族の一員である前に、日本人であることを忘れてはならないと思うんだ。
 日本人、日本人、自分の血の中には三千年の間、受け継がれてきた先祖の息吹が脈打ってるんだ。

 至尊の御命令である日本人の血が湧く。
 永遠に栄えあれ祖国日本。
 みなさんさようなら…… 元気で征きます。

 昭和十八年十二月十日