2018年7月7日土曜日

あの人の言の葉 多田美好

 海軍二等機関兵曹 多田美好

 昭和21年6月28日
 シンガポール・チャンギーにて法務死
 岐阜県出身 33歳


 母上

 長い間色々御厄介になりました。
 此の度の件、お国の為に一生懸命働いたのですが、敗戦と云う大変動で戦犯人として刑を受ける事になりました。
 然しお母さんの教えを守り、家の名を辱める事は決して致しませんでした事を嬉しく思って居ります。

 大らかな気持ちで喜んで国難に殉じて参ります。
 唯、生前何等の御孝養を尽くすことなく、そればかり心残りです。

 どうかお母さん、何時までもお元気で幸福にお過ごし下さいます様お祈りして居ります。

 判決のあります前夜、お母さんにおぶって頂いて川を渡った夢を見ました。
 私は随分仕合せでした。
 何もかも唯なつかしく、凡て夢の様です。

 親思う 心にまさる 親心 今日のおとづれ 如何にきくらん

 お母さん、私は死んでは居りません。
 何時も何時もお傍に居ります。