陸軍中尉 加藤出雲
昭和15年10月17日
安徽省獅子嶺にて戦死
京都府京都市伏見区新町出身 29歳
一方は畑で他方は傾斜していて泥が深い。
道は悪い。
その畑を通っているのだが、きれいな花が一輪泥の上に美しい顔を見せていた。
尖兵の将校がその花をよけて横の泥深い所を迂回して歩いていた。
花の上を踏んで歩く方が泥も少なく近道でもあるのだが、花をふみくだくに忍びなかったのだ。
次を歩いている男もそれにならって花をよけて通った。
次々に兵隊はわざわざ泥の道を遠回りして歩いた。
部隊が通り過ぎた後にはきれいな花が泥の上に浮かんでほのぼのとした美しさを見せていた。
そんな時にさえも、たった一輪の花もふまずに通って行った兵隊の心情が嬉しいのだ。